アルゼンチン南部のペリト・モレノ氷河は、ゆっくりと湖へ押し出される。氷の先端が対岸に届くと、湖の一部を塞ぐ天然のダムになる。水は行き場を失い、氷の壁を挟んで湖の水位に差が生まれる。
しばらくすると、たまった水の圧力が氷の下に通り道をつくり、水が勢いよく流れ始める。流れに削られたトンネルは次第に大きくなり、天井を支えきれなくなると崩落する。巨大な氷のアーチが轟音とともに湖へ落ちる瞬間は、観光客が注目する出来事だ。
氷河は岩山のように動かない存在ではない。自分の重みで少しずつ下流へ流れ、前端では氷の塊が湖へ落ちていく。その動きと湖水の圧力が組み合わさって、氷の壁ができたり壊れたりする。
ただし、この崩落は時計のように毎年同じ日に起きるわけではない。氷河が対岸に接する状態や水位、氷の厚みなどが変化するからだ。ペリト・モレノでは湖を閉ざした氷と、それを破る水の動きが、長い時間をかけて繰り返されてきた。
