古代ローマの闘技場というと、ローマ市のコロッセオがあまりに有名だ。しかしチュニジアのエル・ジェムにも、同じような石のアーチが何段も積み上がる巨大な闘技場がある。周囲の現代の家並みと比べると、その大きさがよく分かる。
建設は3世紀ごろ。約3万5000人を収容できたとされ、北アフリカに残るローマ時代の建築の中でも特に壮大なものだ。観客は階段状の席から、中央の砂を敷いた競技場を見下ろした。
なぜ帝国の首都から遠い場所に、これほど大きな建物が必要だったのだろう。この地域は古代にはオリーブ油などの生産で栄え、地中海の交易と結びついて富を蓄えた都市が存在していた。大規模な公共建築は、その経済力や都市の権威を表すものでもあった。
現代の地図ではエル・ジェムは大都市ではない。だからこそ、巨大な闘技場が残っていることに驚かされる。ローマ帝国の豊かさと都市文化は、地中海の北岸だけに集中していたわけではなかった。
