かつてインド洋の海岸で、奇妙に大きな木の実が拾われることがあった。二つの丸みが合わさった独特の形で、大きなものは20キログラム以上にもなる。どこから来たのか分からず、海底で育つ植物の実ではないかという想像まで生まれた。
この種子をつくるのは、セーシェルの限られた島に自生するヤシ、ココ・デ・メールである。葉も果実も大きく、種子は世界最大級。ココナツに似た仲間だが、育つ場所は広くない。
種子が大きいことには代償もある。一度にたくさんの種子をつくるのは難しく、成長や繁殖にも長い時間がかかる。珍しい形を目当てに採集されれば、次の世代の木が育つ機会が失われかねない。そのため種子の採取や取引は管理されている。
英国のキュー王立植物園も、この植物の特別な生態と保護の必要性を紹介している。海辺に流れ着いた実を見て、知らない世界の植物を想像した時代から、実際に育つ木を研究し守る時代へと、ココ・デ・メールをめぐる物語は変わってきた。
