香水の瓶を手に取っても、その原料がどこで育てられたかまで知ることは少ない。甘く濃厚な香りを持つイランイランの精油は、インド洋に浮かぶコモロなどで生産されてきた。黄色い細長い花びらを垂らす熱帯の木で、採れた花から香りを取り出す。
精油をつくるには、花を集めて水蒸気で蒸留する。花に含まれる揮発性の香り成分を蒸気に乗せ、冷やして回収する仕組みだ。原料の花は同じ木から採れても、収穫の時期や蒸留の条件によって香りが変わる。精油はそのまま完成品になるとは限らず、別の香料と組み合わせて調香される。
コモロではイランイランのほか、バニラやクローブといった香料になる農産物が重要な輸出品になってきた。完成した香水が遠くの都市で販売されるまでには、畑での栽培、収穫、蒸留、輸送、調香といういくつもの仕事がある。
小さな島国で摘まれた一つの花から、世界中で使われる香りの原料が生まれる。香水の華やかな世界を支えるのは、花を育て、蒸留する農業の現場でもある。