マラウイ湖の水中には、青や黄色の魚が岩の間を行き交っている。同じ湖の中なのに、ある魚は岩に生えた藻類を削り、ある魚は砂を口に含んで餌を探し、別の魚は小魚を捕らえる。これらの多くは、シクリッドという魚の仲間だ。
進化の研究者にとって驚くべきことは、そうした魚たちの多くが、近い共通祖先から比較的短い進化の歴史の中で多様化したと考えられている点である。生き方が違えば、餌を取る口の形や歯の並びが違い、繁殖相手を選ぶときには体の色も関係する。こうして多くの種が枝分かれする現象を「適応放散」という。
ただし、すべての魚が完全に別々の系統へきれいに分かれたわけではない。近縁種同士が交雑し、その遺伝子が新しい組み合わせを生むことも知られている。進化は一本の幹から整然と枝が増えるだけの過程ではないのだ。
ユネスコ世界遺産のマラウイ湖国立公園は、その多様性を守る場所でもある。同じ湖の隣り合った岩場に、形も行動も違う魚たちが暮らしている。進化の過程を考えるうえで、一つの湖が大きな実験室のような役割を果たしてきた。
