ニジェール北部のダブーには、岩の表面に二頭のキリンが刻まれている。大きい方は高さ約5.4メートル。子どもの落書きのような小さな絵を想像して近づけば、実物のキリンと向き合うほどの大きさに驚くだろう。
長い首と脚は細かく描かれ、一頭の口元からは線が伸びて人間のような姿につながっている。この線が何を意味したのかは分からない。狩猟や儀礼の場面を描いたのか、キリンと人間の関係を示しているのか、制作した人たちの説明は残っていない。
現在のサハラにはキリンが普通に歩いているわけではない。しかし数千年前、この地域は今より湿り、草原や湖が存在していた。絵に登場する動物たちは、現在とは違う環境の中で暮らした人々の記憶を残している。
岩刻画は露出した岩の上にあるため、人が踏んだり、風雨で削られたりすれば元に戻せない。大英博物館は、この岩絵の保存のために型を取った複製が製作された経緯も紹介している。岩に刻んだ動物の姿を、何千年も先の人々が読んでいるのだ。
