モロッコの古都フェズで建物の上階から旧市街を見下ろすと、丸い石の槽が蜂の巣のように並んでいる。白、赤、茶、黄色。まるで巨大な絵の具のパレットだが、そこでは何世代にもわたって革を加工する仕事が続いている。
動物の皮は、はがしたままでは腐敗しやすく、丈夫な革として使えない。伝統的な作業場では、洗浄して不要な毛などを取り除き、皮をなめしてから染め上げる。槽ごとに違う液を使うため、上から見ると鮮やかな幾何学模様になるのである。
きれいな写真だけでは伝わらないものもある。なめしには時間も労力もかかり、工程によっては強い臭いが生じる。職人は槽の中で皮を扱い、水分を絞り、色の入り具合を確かめる。観光客が屋上から見下ろす場所は、職人にとっては毎日の仕事場だ。
フェズの旧市街はユネスコの世界遺産に登録されているが、その価値は建物の古さだけにあるのではない。古い町の区画の中で、作業の音や臭い、人の手による加工が今も続いているところにもある。
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