「カエルは池に卵を産む」。そう思っていると、ギニアとコートジボワールの国境にそびえるニンバ山のヒキガエルには驚かされる。ここに暮らすニンバヒキガエルは、水に卵を産む代わりに、メスの体の中で子どもを育て、四本の脚がそろった小さなカエルを産む。
体内で受精した胚は、母親から栄養を受け取りながら成長する。発育には約9カ月かかるとされ、幼体が生まれてくるころには、学校の教科書でおなじみのオタマジャクシの姿は見られない。ただし、発育の過程そのものが消えたわけではない。水中を泳ぐ段階を外に出さず、母親の体内で成長を進めるのである。
この繁殖方法が見つかる場所も興味深い。ニンバ山は西アフリカの中でも独特の高地環境を持ち、草地や森林に多くの固有種が暮らしている。ニンバヒキガエルの生息地は狭く、周囲の低地に広く分布しているわけではない。山地という環境がその生活史にどう関わってきたかは研究対象だが、「池がないから胎生になった」と一言で片づけることはできない。
研究者たちは、体内で子どもを育てる仕組みだけでなく、繁殖の季節や、複数のオスが一腹の子の父親になる可能性まで調べてきた。卵が水面に浮かんでいるわけではないため、その繁殖生活は外から観察するだけではわかりにくい。
両生類の繁殖というと水辺を思い浮かべるが、ニンバ山では、子どもが外の水に触れる前にカエルの姿になっている。しかも、その暮らしを支える高地の草地は鉱山開発や土地利用の変化と隣り合わせにある。
