エリトリアの首都アスマラには、1930年代に建てられたとは思えないような建物がある。曲線を描く映画館、幾何学的な集合住宅、そして翼を広げた飛行機のような屋根を持つガソリンスタンド。特にフィアット・タリエーロと呼ばれる旧ガソリンスタンドは、左右へ長く伸びたコンクリートの屋根で知られている。
こうした建築が生まれた背景には、イタリアによる植民地支配があった。1930年代のイタリア人建築家たちは、当時の新しいデザインをアスマラの街に取り入れ、都市を整備した。現代から見ると歴史的建造物でも、建てられた当時は「未来的」な施設だったのである。
しかし建築だけを見て、その時代を理想的なものとして扱うことはできない。都市計画は植民地支配と結びついており、現地の人々には居住や職業などで差別的な制約が課されていた。建物の意匠が優れていることと、当時の政治体制を評価することは別問題だ。
2017年、アスマラの近代建築を含む都市景観はユネスコの世界遺産に登録された。街に残る建物は、20世紀のデザインの実験であると同時に、植民地時代の歴史を伝える資料でもある。