世界最大の滝はどこかと聞かれたら、ナイアガラの滝や南米の巨大な滝を思い浮かべるかもしれない。しかしアメリカ海洋大気庁NOAAが「世界最大の滝」と紹介しているのは、陸上ではなく海の中にある。
場所はグリーンランドとアイスランドの間のデンマーク海峡。冷たい海水が海底の段差を越えて深い海へ流れ落ち、巨大な水の流れをつくっている。
海の中は水で満たされているのに、どうして滝ができるのだろう。
冷たい水が、温かい水の下へ潜り込む
鍵になるのは、海水の密度だ。塩分などの条件が近ければ、冷たい海水は温かい海水より密度が高く、沈みやすい。
北欧の海で冷やされた海水は南へ流れ、デンマーク海峡付近で比較的暖かい海水と出会う。すると冷たく重い水が、暖かい水の下に潜り込むように移動する。
海底には大きな段差があり、重い水はその斜面に沿ってさらに深い方へ流れていく。水面から大量の水が落ちる陸上の滝とは見た目も仕組みも違うが、水が段差を下り、低い場所へ移動するという点で「海底の滝」と呼ばれている。
落差は数キロメートルにもなる
NOAAの説明では、この海底の流れは水深およそ650メートルの場所から、約3000メートルの深さへ向かって落ち込んでいく。水の流量は毎秒約350万立方メートルと推定されている。
膨大な水が動いているのに、海面には陸の滝のような白い水しぶきが見えない。船に乗っているだけでは、足元でそんな大規模な流れが起きていることに気づかないだろう。
この冷たく深い海流は、世界の海を巡って熱や養分を運ぶ大規模な循環の一部でもある。海のベルトコンベヤーと呼ばれる現象だ。
観光客が崖の上から眺められる滝ではない。しかし地球で最大級の水の落差と流れは、人の目に見えない海底に存在している。