台風のニュースで、渦の中心にぽっかり空いた丸い穴を見たことがあるだろう。猛烈な風と雨を伴う大きな渦なのに、中心だけが静かで、青空がのぞくことすらある。これが「台風の目」だ。
不思議なのは、台風の中心がエネルギーの弱い場所だから晴れるわけではないこと。危険な暴風の帯が、そのすぐ外側を取り囲んでいる。
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台風の目と周囲の雲の壁を実際に写した宇宙からの写真。撮影・出典:NASA Johnson Space Center / Wikimedia Commons / Public domain(表示用に縮小)
上昇する空気に囲まれて、中心では空気が下りる
台風の周囲では暖かく湿った空気が中心に向かって流れ込み、目を取り囲む**眼の壁(アイウォール)**で強く上昇する。この上昇気流が厚い雲を発達させ、激しい雨や風を生む。
一方、目の内部では空気が下降する傾向がある。下降する空気は圧縮されて暖まり、雲ができにくくなる。このため中心付近で雲が薄くなり、比較的風の弱い場所が生じる。NOAAによれば、発達した熱帯低気圧の目は、一般に周囲より穏やかな領域だ。
ただし「台風の目は必ず快晴」ではない。雲が残ることもあり、目の形や大きさも台風によって異なる。そもそも、なぜ特定の目の構造が形成されるのかには未解明の点も残る。
目に入って風が止んでも、外に出てはいけない
台風の目が通過すると、一時的に雨が弱まり風が落ち着くことがある。しかし、台風は移動し続ける。中心が通り過ぎれば、反対側の眼の壁がやってきて、再び急激に暴風雨になる。
一時的な静けさは、台風の通過完了を意味しない。 むしろその近くでは、台風の中でも強い風にさらされる可能性がある。
衛星写真で美しい渦を見れば、中心の穴が目立つ。けれど、その穴を囲む白い雲の壁こそが、地上の人にとって恐ろしい場所なのである。