世界地図の左上に大きく横たわるグリーンランド。中央に広がるアフリカと見比べると、両者はそれほど違わない大きさに見えるかもしれない。
ところが実際の陸地面積は、アフリカが約3040万平方キロメートル、グリーンランドが約217万平方キロメートル。アフリカはおよそ14倍も広い。世界地図を見慣れた目には、ちょっと信じにくい数字だ。

写真ではなくメルカトル図法の説明用の地図。地図の作図方法そのものを示している。画像:Mdf(NASA Blue Marble画像を使用して制作) / Wikimedia Commons / Public domain(表示用に縮小)
球を平らな紙に広げると、どこかが必ずゆがむ
地球はほぼ球形だ。球の表面を切り込みも伸び縮みもなく、一枚の平らな紙に移すことはできない。みかんの皮を破らず平らに広げられないのと同じだ。
だから、どんな世界地図にも必ずゆがみがある。面積を正しく描けば形がゆがみ、形をできるだけ保とうとすれば面積が変わる。距離や方位も含めて、何を正確に残すかを選ばなければならない。
その一つが、16世紀にゲラルドゥス・メルカトルが考案したメルカトル図法だ。緯度と経度の線が直角に交わる、見慣れた四角い世界地図になる。
なぜ高緯度の国は巨大化するのか
地球儀を見れば、緯線は北極へ近づくほど短くなる。ところがメルカトル図法では、経線は画面の上から下まで平行なままだ。高緯度の東西方向が引き伸ばされるため、図形の形を保つように南北方向も拡大する。
この拡大は赤道付近で小さく、極へ近づくほど激しくなる。その結果、グリーンランドやカナダ、ロシアが実際の面積に比べて非常に大きく描かれる。赤道をまたぐアフリカは、相対的に小さく見えてしまう。
| 地域 | 実際のおよその面積 |
|---|---|
| アフリカ | 3040万 km² |
| グリーンランド | 217万 km² |
| 比 | 約14対1 |
そんな地図が長く使われてきた理由
ゆがみだらけなら、どうしてこの図法を使うのだろう。実はメルカトル図法には大きな利点がある。一定の方角を保って進む経路を、地図上で直線として描けることだ。
これは船が方位を頼りに航海するとき便利だった。地球上の二地点を結ぶ最短経路とは限らないが、進む方角を読み取りやすい。
つまり、メルカトル図法は失敗作ではない。航海という用途では役立つ一方、世界各地の大きさを比較する用途には向かない、ということだ。面積を正しく比べたいなら、面積を保つ別の図法を使うほうがよい。
2026年には、アフリカの実際の広さをより正確に伝える地図をめぐって、国際的な議論も続いた。しかし本質は、単に「正しい地図」に取り換えることではない。一枚の地図が伝える情報と、隠してしまう情報を知ることにある。
次に世界地図を開いたら、国の大きさだけでなく、その地図が何を犠牲にして描かれたのかも考えてみたい。