「キリンの首は高い葉を食べるために長くなった」という説明は、もっとも分かりやすい進化の話の一つである。しかし実際の研究は、これだけでは結論が出ないことを示している。
首の骨が増えたわけではない
キリンの頸椎は基本的に7個で、人間と同じ数である。一つひとつの頸椎が非常に長く発達し、頭と首の重さを受け止めるための靱帯や筋肉も強化されている。首の運動には、頭蓋骨と頸椎の接合部の形も関わる。
キリンの首は長さ約1.8mになり、数百kgの重さになることがある。長くすることそのものに加え、重さを支えること、首を上下させること、血液を脳へ送ることまでが適応の対象になった。
高い枝を食べられるメリット
キリンは高い樹木の若葉を食べられる。この高さの葉を利用できる大型草食動物は限られ、食物競争の条件によっては有利になり得る。
ただし、その利点がどの環境でも同じほど強いとは限らない。乾季と雨季で食物が異なるうえ、メスや若い個体はオスより低い高さで採食することも多い。
オスの争いも首の長さに関係した?
オスのキリンは首を振り回して重い頭をぶつける「ネッキング」を行う。より長く重い首と頭が争いに有利なら、繁殖に成功したオスを通じてその形質が増える可能性がある。これを性選択の観点から説明する仮説がある。
しかし、首の進化を性選択だけで説明できるかも議論が続いている。メスにも長い首があることなど、説明すべき点は多い。
「必要だから伸びた」という説明は違う
個体が必要を感じて頸椎を伸ばし、その変化を子へ伝えたという意味ではない。遺伝する個体差が生じ、環境や繁殖条件によって世代を通じた変化が起きるというのが進化学の基本的な捉え方だ。
化石、現生キリンの遺伝情報、他のキリン科動物との比較などを組み合わせることで、首の進化史は今も研究されている。