セルビアのドナウ川沿いにあるレペンスキ・ヴィル遺跡からは、大きな目と広い口を持つ不思議な石像が見つかっている。魚にも人間にも見える顔で、現代の彫刻家がつくったようだが、非常に古い時代の人々が残したものだ。
この場所には、中石器時代から新石器時代にかけて人々が暮らしていた。発掘では特徴的な台形の住居跡や炉、埋葬の痕跡などが見つかっており、移動途中に立ち寄っただけの場所ではなかったらしい。
川には魚が豊富で、人々の食生活にも重要だったと考えられている。そのため、魚のような顔の石像には、川と生き物への信仰や特別な意味が込められていた可能性が指摘されてきた。ただし、文字による説明が残っているわけではない。何を表す彫刻だったのかは、配置や周辺の遺物から推測するほかない。
奇妙な顔を見て笑ってしまうこともあるだろう。けれど、その石像を刻んだ人々もまた、身近な川の生き物を見つめ、自分たちにとって大切な何かを形にしようとしたのかもしれない。
