ルクセンブルクで列車の二等車へ乗るなら、原則として切符を買う必要がない。2020年、国内のバス、トラム、鉄道の多くが無料になった。首都から地方へ行くときも、通常の公共交通なら運賃を気にせず移動できる。
ただし、列車の一等車や国境を越える区間などには例外がある。そして、無料化によって交通の運営費が消えたわけでもない。利用者が乗車のたびに運賃を払う代わりに、公的な資金で支える仕組みに変わったのである。
ルクセンブルクは国土が小さい一方、周辺国から通勤する人も多く、自動車交通の混雑が問題になってきた。公共交通を利用しやすくすれば、移動手段の選択肢が増える。ただし、切符の値段がゼロになっても、列車が通らない場所や乗り換えが不便な場所では車のほうが使いやすいかもしれない。
交通の無料化は、運賃という費用をなくした魔法ではなく、公共交通の費用を社会でどう負担するかという政策的な選択だ。券売機のない乗車体験の裏には、その仕組みがある。
