ドイツのケルンに立つ大聖堂は、二つの細長い尖塔が空高く伸びる巨大なゴシック建築だ。工事が始まったのは1248年。完成を祝ったのは1880年で、着工から632年もの時間が過ぎていた。
もちろん、600年以上ずっと職人が働き続けていたわけではない。途中で工事が長く止まり、未完成の建物のまま何世代もの人々が暮らした。最初に計画を立てた建築家が生きているうちに完成を見ることは、到底できなかった。
19世紀になると工事が再開され、中世に描かれた設計図などを参考にしながら、もとの構想を実現しようとした。工事が止まっていた間に、ヨーロッパでは宗教改革も産業革命も起き、政治や技術のあり方が変わっている。
ケルン大聖堂の完成は、一人の建築家の仕事が終わったという出来事ではない。何百年も前の構想を、別の時代の人々が引き継いだことによって実現した建築だった。
