デンマークの国旗「ダンネブロ」には、少し変わった誕生の物語がある。1219年、デンマーク王の軍が現在のエストニアのタリン周辺で戦っていたとき、空から赤地に白い十字の旗が降ってきたというのだ。苦戦していた兵士たちはこれに勇気づけられ、勝利を収めたと伝えられる。
もちろん、空から旗が降ってきたことを歴史的事実として裏付ける証拠はない。伝説が文字に記されたのは戦いからずっと後であり、当時の史料に出来事の細部が確認できるわけでもない。それでも物語が消えなかったのは、旗の起源を国の歴史の中の一場面に結びつける力を持っていたからだろう。
デンマークとエストニアの関係も、この伝説では重要だ。今日のデンマークから離れたバルト海東岸が物語の舞台になっているのは、当時の王国がこの地域へ勢力を広げようとしていた歴史と関係する。国旗の話をたどると、中世のバルト海で起きた争いに行き着くのだ。
現在のダンネブロは国家行事だけでなく、誕生日や家庭の祝い事にも登場する。空から降ったという伝説の真偽は分からなくても、赤と白の旗が生活の中に根づいていることは確かである。