1972年、ブルガリアの黒海沿岸に近いヴァルナで、工事中に古い金属製品が見つかった。調査を進めると、そこは何百もの墓が集まる先史時代の墓地だった。埋葬された人々のそばには、首飾りや腕輪、細かな金の飾りまで残されていた。
金製品がつくられたのは、およそ紀元前4600~4200年。ギザの大ピラミッドよりずっと古く、世界でも最古級の精巧な金細工のまとまりとして知られている。
考古学者たちにとって衝撃的だったのは、金の量があまりに偏っていることでもある。墓の中には金製品がほとんどないものがある一方、一部の墓には非常に多くの品が集中していた。金属を加工できたというだけでなく、財産や権威が特定の人に集中していた可能性を示す証拠でもある。
金は柔らかく加工しやすく、腐食しにくい。その性質が早い時代から装飾に利用されたのだろう。けれど、その輝きに特別な価値を与え、死者とともに埋めるという行為には、当時の社会の考え方が反映されている。
文字による記録が十分に残らない時代でも、墓の中に置かれた金の数や位置は、誰が特別な扱いを受けていたのかを探る手がかりになる。
