地震の揺れを数秒前に知らせる「緊急地震速報」はある。地震が30年以内に起こる確率を示す地図もある。それなのに「来週、東京で大地震が起こるか」と聞くと、科学者は答えられない。
ここには、似ているようで別の三つの技術がある。予知、長期的な確率評価、そして発生した地震を素早く検知する速報だ。

1985年の地震観測施設の写真。撮影・出典:U.S. Geological Survey / Wikimedia Commons / Public domain(表示用に縮小)
「いつ、どこで、どの規模か」を当てるのが予知
気象庁は、地震予知を発生時刻・場所・規模という三つの要素を精度よく限定して予測すること、と説明する。現在の科学では、そのような確度の高い短期予測は難しい。
地震は地下の岩盤にたまった力が断層のずれとして解放される現象だ。地下深くの応力や破壊がどの時点で始まるかを完全に観測できない。小さな地震や動物の異常行動を後から見つけても、それが次の大地震の前兆なのかどうかを再現性よく判別するのは難しい。
しかも「今年、日本のどこかで地震が起こる」は簡単に当たるが、役立つ予測とは言えない。科学的な価値は、外れる可能性のある具体的な条件を事前に示せるかにもある。
30年以内の確率は、日付を当てたわけではない
長期評価は過去の地震や断層運動などから、一定期間に地震が起こる可能性を統計的に見積もる方法だ。防災計画には役立つが、個別の発生日を決めるものではない。例えば「30年以内70%」は、明日が安全であることも、30年目に必ず起こることも意味しない。
南海トラフ地震臨時情報も、地震の日時を予言する情報ではない。異常な現象が観測されたとき、通常時と比べて大規模地震の可能性が相対的に高まったと評価するための仕組みだ。
緊急地震速報は、すでに始まった地震を知らせる
緊急地震速報は地震の発生後、先に届く地震波などから震源や揺れの到達を推定して、強い揺れが来る前に知らせようとする。地震を未来から見通しているわけではない。震源に近い場所では、速報より先に強い揺れが届くこともある。
つまり、予知ができないからといって、地震の研究や防災情報が無意味なわけではない。日時は分からなくても、危険な地域を調べ、建物を強くし、揺れを早く知らせることには大きな意味がある。
SNSで「○月○日に巨大地震」と断定する投稿を見たときは、具体的な科学的根拠と事前検証可能な予測かを確かめたい。気象庁は、日時と場所を特定する確実な地震予知はできないとしている。