イランの乾燥地帯には、巨大な土色のドームが残っている。先端のとがった形だけを見ると、宗教施設のようにも思えるが、用途はずっと身近なものだった。氷を夏まで保存する貯蔵庫「ヤフチャール」である。
暑い砂漠で氷を使うには、冬の間に準備しなければならない。ヤフチャールの中には、地下に掘った貯蔵空間があり、冬に集めた氷を厚い壁や日陰で熱から守った。地域によっては、屋外の浅い水盤に数センチの水を張り、冬の夜に凍らせて氷をつくることもあった。昼は暑くても、冬の乾いた夜には気温が大きく下がる。その条件を利用したのである。

現代の冷蔵庫は電力を使って熱を外へ運び出す。ヤフチャールは逆に、冷たい氷に熱が入りにくい構造をつくる。地下の空間、厚い壁、直射日光を遮る工夫は、どれも氷を長く保つためのものだ。
『Encyclopaedia Iranica』によると、ヤフチャールは主として氷そのものを保管し、夏に使えるようにする施設だった。したがって、食料を一式冷やす現代の冷蔵庫とまったく同じ用途だったと考えるのは正確ではない。
電気冷蔵庫が普及する以前、人々は気温の低い季節に冷たさをつくり、それを断熱で次の季節まで持ち越していた。砂漠に残る大きな土のドームには、暑さと寒さの両方を使った生活の工夫が詰まっている。