同じ国の役所に電話をかけたら、相手はもう翌日だった。しかも、時差が数時間という話ではない。暦の日付が一日違う。
そんな不便を長く抱えていたのが、太平洋の島国キリバスである。
キリバスの島々は広大な海に散らばっている。ところがかつて、太平洋を通る日付変更線が、その島々の間を横切っていた。西側と東側で日付が一日違い、同じ国なのに役所や商店が営業する曜日までずれてしまうことがあった。
そこで1995年、キリバスは国内で使う日付をそろえるよう変更した。東側の島々の時間帯を切り替え、国全体が日付変更線の同じ側に位置するようにしたのである。
その結果、地図上の日付変更線は、キリバスの領域を避けるように大きく東へ張り出した形で描かれるようになった。キリバスのライン諸島では、UTCより14時間進んだ時間帯が用いられている。
日付変更線は、地球に刻まれた溝ではない。経度180度付近に沿うという大まかな決まりはあるが、各地でどの日付を採用するかは国や地域の判断にも左右される。
日付変更線は、地球の上に自然に刻まれた一本の溝ではない。キリバスの変更は、地図に引かれた時刻の境界も、そこで暮らす人々の事情によって変わり得ることを示している。