地面の上に立つ人間にとって、頭と心臓の高さの差はそれほど大きくない。ところがキリンでは、心臓から頭までの高低差が数mになる。脳に十分な血液を届けるだけで、特別な循環器のしくみが必要になる。
心臓から頭へ血を押し上げる
キリンの全身の動脈圧は、人間と比べて非常に高い。研究をまとめたサンディエゴ動物園の資料には、体幹の平均圧約203mmHgという値が示されている。
重力に逆らって上方へ血液を運ぶと圧力が低下するため、この高さの差を補う必要がある。心臓の左心室の筋肉の壁は厚く、強い収縮に適している。
頭を下げても大丈夫なのはなぜ?
水を飲む際、キリンは前脚を広げて首を大きく下げる。そのとき脳に大量の血液が一気に流れ込むなら危険だが、首の静脈の弁や伸縮性、周辺の筋肉などが血流を調節する役割を持つ。
頭を上げ直す際にも、血液が急に下方へ流れて脳が血液不足にならないようにする必要がある。上げ下げの両方に適応がある。
キリンの心臓は11kg?
「キリンの心臓は11kg」という数値は一般向けの説明によく登場する。しかし、古い報告の測定に疑問があるとする研究もあり、心臓の大きさが体重に対して他の哺乳類より極端に大きいとは限らない。
大事なのは単純な重さよりも、心臓の構造と高い血圧を維持する能力である。
人間の高血圧と同じなのか
キリンの高血圧は体の形に適応した生理的な状態であり、人間の高血圧症をそのまま当てはめられるわけではない。循環器を研究することで、哺乳類の血圧調節を理解する手がかりも得られる。