文字の歴史は、壮大な詩や法律だけから始まったのではない。
メソポタミアの初期の文字資料には、穀物や家畜など、物資の数や配分を記録したものが多い。都市で集めた食料を誰にどれだけ渡したかを管理する必要が、数と物の種類を書き残す技術を発達させたと考えられている。
紀元前4千年紀の終わりごろの初期の記号は、しだいにくさび形の筆跡を使う楔形文字へと発展した。後には文学や外交、法律などの記録にも使われるようになった。文字の発達には、日々の事務作業が深く関わっていた。
都市が大きくなると、穀物や羊を『誰が、いくつ、どこへ渡したか』覚えるだけでは管理できなくなる。数や物の種類を記号で残すことは、物資を集めて再分配する仕組みを支えた。
文字が普及した後には、王の記録や法律、文学など用途が広がっていった。文字の歴史は、壮大な物語だけでなく日常の経済活動とも深く関わっている。